現代語訳の方法(概要)

  1. 現代語訳の前提
  2. 現代語訳の対象文字
  3. 現代語訳のツール
  4. 現代語訳後の手順
  5. 現代語訳の適性

現代語訳の前提

 現代人が読みやすいように、文章を修正していく必要があるもの(文章、本、Webページなど)と思われるかも知れません。
しかし、これは要請(必要性、モチベーション、きっかけ)であって、許可という意味で出来るかどうかを確認する必要があります。
文章には、書いた人の著作権が伴います。
現代語訳をはじめ、改変することは著作権に関する調整が必要となります。
OKなパターンにはいくつかあります。
現代語訳が必要なほど昔の文章は「著作権が消失している場合」にあてはまる可能性があります。
日本国内では著作権は、著作者の死後50年後(の年末)がTPP発効前であれば死後50年後、発行年以降であれば死後70年後に消失します。
確認済みの著者のリストは著作権の消失した著者のリストです。
最も簡単な場合、著作者を国立国会図書館サーチ(やWikipedia)で検索すれば、現代語訳開始となります。

ですが、この確認方法は法律的に充分ではありません。
著作者の死後、ご子息や親戚が著作権を継承している場合、著作権継承者の死後までは著作権が有効です。
現代語訳などの改変をしようとする人はこれを調べる必要があります。
具体的には、出版された書籍であれば、出版社に問い合わせます。
各出版社のホームページにある問い合わせフォームやメール送信をして、メールの返信がない場合には問題無しの可能性が高いです(社内で調査した結果、著作権が消失していて、返信をしていないと推察される)。
また、著作権継承者の存在、許諾書の必要性などの返信がある場合、提示された手順に進み、現代語訳開始です。

出版社からの返信が無い場合や出版社が現存していない場合も含めて、調べる術が無い場合もあります。
著作者の親戚や友人でなく、関連の深い団体も無い場合、著作権継承者のような情報に辿り着くのは困難です。
全ての日本人・外国人に訪ね歩いて、質問し、著作権継承者がいないことを確かめるのが地道で確実な方法として考えられます。
このような方法は現実的でないため(寿命)、このような方法以外に確認手段が無い場合、相当の努力をしたと誰もが認めます。
相当、著作権継承者の情報を調べようとした場合、(実際はいらっしゃるかも知れませんが、公表されていないなど)著作権が消失したとして行動してOKです。
(SNSなどで宣伝して関係者が閲覧することを待つ手段もあります。)
確認手段を考えあぐねることも努力に含めることとして、相当の努力のうえ、現代語訳に進みます。

書籍に記されている著者の死後70年以上経過し、著作権継承者もいないが、著作権が有効な場合もあります。
出版社によると、その分野の大家が記し名著となっていたため、第3版では少し追記したものの名前を載せずに出版したため、追記者による著作権が有効となっている場合があります。
Jin's lab.: 解析概論の著作権

著作者が不明という、童謡などの場合、文化庁のサイトから裁定申請を行います。
著作権者不明等の場合の裁定制度
また、オーファンワークスという団体もあります。

さらに、将来的に法律が変わった場合(TPPの影響など)、公開を停止する必要性が生じるかも知れません。

法律の話は以上ですが、法律とまでは言わないまでも、道徳・倫理的な話があります。
あくまで日本国内では、死後70年の経過で著作権継承者もいない場合、現代語訳は合法です。
ただし、その書籍を(当時の文章そのまま、現代語訳の後、)現在も出版社が販売していて、しかもその売上が出版社の経営にとって重要であるほどの規模である場合があります。

例えば、こんなニュースがあります。
国立国会図書館のホームページでは、著作権が消失していると確認され、国会図書館でスキャンの作業が済んだ書籍はデジタルコレクションというサイトで公開されています。
しかし、出版社が上記の理由で、公開停止を申し立てました。
結果として、法律上の権利は認められませんでしたが、国会図書館は公開を停止しました。
一般の利用者から見ても、公開停止にすることが正解のように思われますが、このような道徳・倫理的な理由で、現代語訳を控えた方がよい場合があります。 現在も出版社が(現代語訳の後)販売し続けている場合、現代語訳をして読みやすくした書籍を公開することが、社会の為になっているかどうか、判断する必要があります。

実際のところ、国立国会図書館デジタルコレクションで公開されていれば、確認済みであるとして、利用してもよいでしょう。
ただし、国立国会図書館が許諾を得て公開している場合、利用するには同様に許諾を得ることとなりますので、公開範囲について気を付けます。

現代語訳の対象文字

 現代人が普通に読めれば、現代語訳が出来ていると言えますが、そのために必要な知識があります。
戦前に使われていた漢字(旧漢字)を現代の漢字に置き換えたり、使われなくなった接続詞や言い回し、文法を現代の文章にしていきます。
また、現代では少し意味が変わっている言葉を改めます。(差別的な表現やニュアンス)
 専門用語や数式($1/\sqrt{\ }\left(1-v^2/c^2\right)$を分数$\displaystyle\frac{1}{\sqrt{\displaystyle1-\frac{v^2}{c^2}}}$で書いたり、指数部ではスラッシュのままが普通、など)など、現代語訳をしようとする文章に関する経験が必要な場合もがあります。
その他、測定データや相対的な年数(「10年前」や「今世紀」)を現代の数値で記述します。

現代語訳のツール

 現代語訳を行う文章(データ)の形式によっては、便利なツールがあります。
 テキストファイルの場合、旧漢字を現代の漢字に置き換える(変換する)ため、変換ツールが便利です。
そのような機能を備えたアプリケーションがインターネット上に公開されているかも知れませんし、プログラミングを習得した人であれば、個人でカスタマイズできるようなアプリケーションを作成できます。
このサイトでは現代語訳アプリケーションを公開しています。

 国立国会図書館デジタルコレクションでダウンロードしたときは、画像ファイルで持っていることになります。
このサイトでは国立国会図書館デジタルコレクションの書籍の全ページの画像を一括表示できる国立国会図書館デジタルコレクションの画像表示を公開しています。
表示した後、右クリックでダウンロードできます。

 OCRという技術を使えば、画像ファイルから文字をテキストファイルの形式に変換できます。
無料であれば、Googleドライブに画像ファイルをアップロードして、それをドキュメント(文章)の形で開く操作により、OCRが実行されます。

(ちなみに、公開されていない領域であってもインターネット上にファイルをアップロードしていますが、誰でもダウンロードすることを許可されている画像ファイルであるため、問題ないと考えられます。)
また、Google Playにアップロードされている書籍は、文字をマウスで選択してコピーするだけで文字にしてくれます。(例:常微分方程式論 - Google Play

 文章をPDFファイルで持っている場合、テキストを選択できる場合とできない場合があります。
選択できない場合、PDFから別のファイル形式に変換するツールを使った後、上記の手順に進みます。

現代語訳後の手順

 現代語訳をした後、文字が現代の言葉に置き換えられているかどうか、入力ミスがないかどうか、確認します。(校正)
また、現代のデータになっているかどうか、現代でも正しい内容かどうか、底本のミスも含めて、事実確認をします。(校閲)

 さらに、公開(発表)する方法として、Webページやブログであれば、Webプログラミング(HTML)やネットリテラシー、インターネット上での宣伝方法(SEOやSNSなど)が必要となります。
個人出版であれば、販売するまでの方法、リスクを知る必要があります。

現代語訳の適性

 1冊の書籍でも、完了するまでに数ヶ月かかるため、進捗状況に対して、プレッシャーに感じられる方にはおすすめできず、進んでいてもいなくてもどうでもいい方や何も考えていない人の方におすすめできます。
進捗への姿勢について、短期集中型の方にはおすすめできず、現代語訳自体を楽しんだりストレス解消になる方にはおすすめできます。

 現代人が読みにくい・読めない文字・言葉・表現・数式について調べるため、インターネット(に限らず)で調べ尽くす気概のある(興味、徹底)方におすすめできます。

 現代語訳を行っている時、それを続けやすい環境(その人にとって)を実現できる方におすすめできます。


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